離婚の仕方

Q 離婚したいのですが夫が離婚届に判を押してくれません。離婚するにはどうすれば?

 

A 離婚に同意してくれるなら,役所で離婚届を提出して終わりです。嫌がる相手から無理矢理籍を抜く(=離婚)するには,

 

 ①まずは調停をする

 ②調停不成立となったら,訴訟する

 

という2段階が必要です。

 したがって,離婚に同意してもらえない場合は,家裁に調停を申し立てます。申立書が家裁に用意されているので,そこに住所氏名などを書き込んで,戸籍謄本を添えて裁判所に提出します。調停では,法律云々より話し合いでコトが決まります。

 

 調停で話し合いがつかなければ,そこで初めて訴訟提起することになり,そこでは裁判官が,「暴力,浮気,長期間の別居など,婚姻を継続しがたい事由があるか」によって離婚の可否を決します。

 

【離婚の可否】

◆相手が同意すれば離婚できます。「離婚そのものに争いはないが,親権や財産分与で争っており,結果として離婚が成立していない」ケースが大多数です。

◆相手が離婚に同意しておらず,離婚理由が単純に「性格の不一致」だけだと,訴訟となれば負ける,つまり離婚できない可能性が高いです。別居期間が長いというだけでも,4年はみておいた方が無難です。

・同居6年,別居2年で離婚を否定(東地H17.1.26)

・別居2年で夫婦ともに関係改善の努力をしていないとして離婚否定(東地H17.3.30)

・別居3年越えだが一方に離婚意思なく未成熟子有りで離婚否定(東地H14.11.21)

 

◆ただし,いきなり別居して他の異性のもとに走るとか,自宅から追い出す+生活費を送金しない場合など社会的倫理的非難を浴びるような別居の仕方は「悪意の遺棄」として逆に離婚理由とされる可能性があります。真摯に説得したあとに穏やかに別居しましょう。

 ただし,最近の裁判例は「悪意の遺棄」を認定しない傾向があるので,単なる別居+α程度で訴訟まで行こうとするかは検討を要します。

「浮気をした側」から離婚訴訟を提起しても,基本,負けます。その点は判例が形成されているので,注意を要します。

 

【管轄の裁判所】

相手がいわきに住んでいれば,いわきの家裁に調停申立が可能です。相手がいわき外でも,「乳幼児がいて遠方の裁判所に行けない」など事情によっては,いわきの家裁での調停が認められる場合もあります。

 

【ポイント】

①相手が「離婚しない」とがんばりそうで,浮気や暴力なしなら,訴訟突入した場合は辛いかもしれません。

②自分が浮気した場合も,出るところ出たら負ける可能性は頭にいれておきましょう。

 

【弁護士費用についてのコメント】

離婚調停,訴訟をご依頼の場合は,着手金報酬金30万くらいが多いと思われます。しかし,調停段階からご依頼いただいて訴訟に移行する場合,ケースによっては10万円くらい追加で頂戴することもあります。また,財産分与対象が多額で争いが深刻な場合や,浮気の有無そのものが争いになっている場合など,10万,20万増額される可能性はあります。

 

【保険と児童手当】

①健康保険

 夫婦双方が国民健康保険の場合は,市役所で「世帯分離」という住民票を分ける手続をすれば,保険証をゲットできます。妻が夫の社会保険に加入していた場合,妻は,自分の勤務先で社会保険に入ることによって保険証をゲットするか,市役所で「被扶養者資格喪失証明書」を夫から入手して国民健康保険に加入することになります。同証明書がない場合でも,DV相談を受けていることの証明書(婦人相談所など公的機関)があれば国民健康保険加入ができます。

 

②児童扶養手当

 児童扶養手当(ひとり親家庭に18歳まで支給されるお金)は,離婚成立「前」でも理論的には受領可能な場合がありますが,父親に1年以上監護意思と実績が客観的にないなど,厳しい要件があります。DVなどで長く避難しており音信不通の場合は,役所に申し入れをしてみましょう。

 なお,児童手当(子供手当)は別物です。

 

氏と戸籍の話

結婚によって氏が変わった者は離婚によって元の姓及び戸籍に戻るのが原則です。つまり,だいたいは妻が旧姓に戻って親の戸籍に戻ることになります。子供は,手続をしないと元の戸籍(≒夫の戸籍)に残ったままです。

 

離婚前の姓を継続して使いたい場合は,離婚から3箇月以内に届出をします。その場合は,新しい戸籍が編成されます。