あっしの「ニャーナヨガ」クラスで!
ガンが治る!アトピーが治る!
生徒さん,いらっしゃい!!
はい,違法な広告。
そのうち,消費者庁から指導がくるかもね。
え・・・・ヨガがガンに効くって,聞いたことある。
お肌にもいいはずにゃ!
生徒さんも,「最近ヨガのおかげで,お肌の調子がいいの!!」って,言ってたにゃ!
聞いたことがあるとか,そのはずだ,とか。
一部の生徒がそう言っている,じゃ,ダメだね。
っていうか,生徒って,人間ですか。
効果効能を示すには,論文や厳格な実験結果が必要。
一般人じゃあ,用意できないだろうね。
・・・ヨガが,がんに効くって医学論文。
ネットで拾ったにゃ!
どうだ!
・・・それって,対象が女性患者で。
乳がんの研究結果ばっかりじゃん。
しかも,アーサナのみならず,呼吸法や瞑想もとりいれたクラスの研究結果が多いみたいだね。
キミのクラスは,呼吸法や瞑想もきちんと入れてるのかい?
うっ・・・・・太陽礼拝でガッツリ動くのが主体です。
瞑想は・・入れてないにゃ・・・・
・・・・キミ,神経質って言われない?
・・・実務がそうなってるから,しょうがないだろ。
チラシ刷りまくった後に,行政から指導を受けないといいね。
あと,「ニアーナヨガ」って商標登録されてるよ。
紛らわしいクラス名だと,差し止め請求くらうよ?
・・・怖くなってきました。
勉強するにゃ。
ビジネス,なめたらアカンで。
「猫のポーズを極めるクラス」はどうでしょう。
そりゃ,先生がネコなら,うまくなるかもしれんね。
生きてるだけで,ネコのポーズ。
【景品表示法】
1 基礎知識
商品やサービスを著しく優良と誤認させる広告表記,合理的な根拠のない広告表記は,してはいけません(景品表示法5条)。
「著しく」なので,気分爽快,健康増進,開運といった抽象的,主観的表現はOKとなりやすいのですが,小顔になるとか痩せるといった,具体的な効果効能の表示は,かなり厳格なエビデンスがないとNGです。
また,抽象的主観的表現でも,「このヨガをやったら運が開けて100万円の宝くじがあたった!!」という体験談がずらりと並ぶような体裁だと,「著しく」に該当する余地があります。結局,程度問題ということになります。
2 具体例の検討
たとえば,「ヨガで小顔になります」という表記。ヨガで小顔になる証拠が必要です。しかも,相当数の生徒を集めて小顔になったかどうか統計処理した調査結果や医学論文,といったレベルのものが必要と解されています。単なるアンケートレベルでは不可です。現状,そのような資料はないと思われます。
その他,腰痛が治るとか,骨盤が矯正されるといったものも全て同じ理屈で判断されます。客観的な効果効能を謳うのは,やめておいた方が無難です。
もちろん,小さくやっていれば,「消費者庁が指導要請する」まではいかないでしょう。でも,それは,「見つかっていない」というだけにすぎません。
3 違反の効果
消費者庁等から是正指導を受け,場合により公表されます。指導に反すると,その時点で犯罪となり刑事罰をくらいます。二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金を科されます。
【商標法】
1 基礎知識
登録された商標,それに類似する表示は,自分のサービスをあらわす名称として使ってはいけません。クラス名,サービス名,ドメイン名を決める前に,
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
にて,つけようとしているクラス名やサービス名につき,同じ名称の商標が登録されていないか,確認することが勧められます。登録商標そのものずばりのみならず,その登録商標と紛らわしい名称の使用も不可なので,類似している名称が登録されていないかも気を付ける必要があります。
アンチエイジングヨガ,アートヨガ,バレリーナヨガ,Zenyoga,花ヨガ,笑いヨガ,美人・ヨガ,月経血ヨガ,アスリートヨガ,空中ヨガ,骨盤シェイプヨガ,骨盤スリムヨガ,寺ヨガ,Silver Yoga,筋調整ヨガ,疲れリセットヨガ,キッズヨガ,ちつヨガ,効率ボディメイクヨガ,エアロヨガ,マインドフルヨガ,ファミリーヨガ,子宝ヨガ,ネイチャーヨガ,山ヨガ,アーユルヨガ,和ヨガ,音ヨガ,ゆるヨガ,骨盤筋整ヨガ,骨盤調整ヨガ,月経血調整ヨガ,体軸ヨガ,サイレンスヨガ,肩甲骨ヨガ,呼吸ヨガなど,かなりの数の名称が,41類(スポーツの教授)の分野の商標として既に登録されていますから,注意しましょう。
2 効果
無断使用した場合,商標権者から,売上の数%などの使用料を請求されたり,使用の差し止め(HPやチラシからの削除)をくらう恐れがあります。サービス名変更を余儀なくされ,蓄積された知名度を失うことになりかねません。長年使っていたりすると,商売上,大ダメージです。
①長く使うつもりで,②それなりの売上が見込まれる場合は,弁理士さんに10万円程度払って商標登録することを検討しましょう。ある日,突然そのクラス名が使えなくなる・・・というリスクをとれる(単発的なクラスであるとか、クラス名が独創的でない場合)なら,別ですが。
3 実際上の対処
①クラス名を決める前に,それで商標登録がないか,ググりましょう。
②広告する場合は,主観的な表現を中心に。あるいは,効果効能でないもの(立地とか経験年数とか理念とか)を中心にしましょう。
なお,表示が適正かどうかは消費者庁に事前相談が可能です。が,立場上,消極的な回答しかしてくれないでしょうね・・・。
1 書籍のタイトルで過激なのがあるけど?
広告規制がかかるには,「広告」つまり特定の商品購入への誘因である必要があるので,単なるツイートや書籍のタイトルは規制外となります。ただし,サービス販売への紐づけが強い場合,例えば書籍という体裁だが,ひたすら一つの商品の宣伝に終始するもの(いわゆるバイブル商法)は「広告」に該当しえます。
2 ヨガの医学的効能に対するエビデンス
下記サイトに,ヨガの医学的効能に関する,「ある程度の」医学的エビデンスは掲載されていますが,技法の内容や練習条件などに偏りがあります。よって,あなたのする,或いは受けるクラスに対応しているといえるエビデンスかどうかは慎重な判断が必要です。
医学博士 岡孝和氏のサイトも,エビデンスが極めて充実しています。
下記の「がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス 2016版」(NPO法人日本緩和医療学会編 金原出版株式会社)111~118頁にも,ヨガががんに効くか,詳細な検討がされています。
しかし,エビデンスのほとんどは女性,乳がん患者のための,医療機関が作ったヨガなので,乳がん以外の患者,男性,パワーヨガホットヨガなど別種のヨガについて応用できるかは不明,とも書かれています。このような科学的かつ慎重な態度が必要です。
3 モノを売る場合の広告規制
承認された医薬品や医療機器,トクホ等の例外を除き,病気の予防治療効果や身体組織への影響を広告してはなりません(薬機法68条)。上記景品表示法の規制と異なり,「合理的な根拠があっても」不可,です。
つまり,サービス(ヨガクラスなど)を売る場合ではなく,モノを売る場合(ヨガマットとかアロマオイルとか),医薬品的効果効能をうたうのは不可です。
ヨガ関連では,ハーブティー,アロマオイルあたりは気をつけたいところです。たとえば,「うつが改善する特別調合のアロマオイル」「腰痛が治るヨガマット」というのも,未承認でのそのような広告は不可となります。
繰り返しになりますが,モノを売らない場合,つまり普通にヨガのクラスを開催しているだけの場合は,薬機法の広告規制は関係ありません。
違反すると,刑事罰となり,二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金となります(同法85条)。
4 景品表示法違反指摘例
〇クロレラの健康効果をうたうチラシについて,「病気と闘う免疫力を整える」「神経衰弱・自律神経失調症改善作用」などの記載(京都地裁平成27年1月21日)
〇エステサロンの広告で「肩こりや頭痛も改善」,「首痛,肩こり,偏頭痛を改善」「みるみる脂肪が溶けていく」(平成30年度適格消費者団体差止事例集107頁)