ヨガと医師法

ヒマラヤに行きまして。

そこの伝説のヨギから,断食を習いました。

断食で,どんな病気も治るんだと。

よし,断食リトリートひらいて。

生徒さんの病気を治そう。

戸川弁護士

すごいところで,習ってきたね。

でも,断食って,危険じゃね?

いや,3日間,水で過ごすだけにゃ。

猫には,よくあること。

戸川弁護士

・・・すごい,本格的だね。

水分や塩分をどうとるとか。断食明けにどうするとか。

戸川弁護士

断食が裏目にでる病気とか,あるんじゃない?

キミは,ヒマラヤのヨギを信じないのか!

戸川弁護士

信じているけどね。

日本では,病気を治す医療行為は,お医者さんしかやっっちゃいけないの。

・・・実は,わたし,医学部卒業したんです。

戸川弁護士

嘘つけ。

 

1 基礎知識

 「医師の技術や知識がないと保健衛生上危険のある行為」は,お医者さん以外,禁止です(医師法17条)。ヨガインストラクターが,ヘルニアを治そうとして施術したり,糖尿病を治そうとして生徒に断食させたりするのはNGです。

 ただし,①保健衛生上危険+②医療及び保健指導目的の行為という2つの目の要件もさらに必要かどうか,争いがあります。

 

 

医師法違反の裁判例

・断食道場の入寮者に断食療法を施行するため症状、病歴等を尋ねる行為(最高裁S48.9.27)

・聴診、触診、指圧等を行い交感神経等を刺激してその興奮状態を調整する行為(最高裁S30.5.24)

・検査をして身体症状や具体的病名を告げる行為

(札幌地裁H16.10.29)

・タトゥーを彫る行為は,医療及び保健指導の目的の下に行われる行為でないから医師法違反ではない(大阪高裁H30.11.14)

 

2 具体例の検討

 

(1)ファスティング指導,ダウティ指導など

 保健衛生上の危険があると言わざるをえないので,医師法違反の可能性があります。断食道場も,医師と提携している場合が多いように思いますが,これは医師法違反にならないためではないかと個人的には推察しています。

 

(2)指圧や手技により疾病を直そうとする行為

 保健衛生上,危険であれば医師法違反になりえます。関節を急速に捩じる手技などは医師法違反の可能性が特に高いと思われます。なお,マッサージや按摩,指圧を業として行うことは通称あはき法により禁止されており,同法にも違反しますので,いずれにせよやってはいけません。

 (ただし,マッサージとあはき法規制の関連はかなりグレーであり,「リラクゼーション」などという名のもとに,実際は無資格のマッサージをしている例は極めてよく見られます。)

 

(3)瞑想やストレッチ的な動きの指導

 「保健衛生上,危険」があるかどうかによります。「医師からの指導・助言に従い、ストレッチやマシントレーニングの方法を教えること等の医学的判断及び技術を伴わない範囲内の運動指導を行うことは、「医行為」に該当しない」と経済産業省から示されています(平成26年2月25日グレーゾーン解消制度内で回答)。「医師の指導なしに」やることが合法かどうかは不明ですが,単なる瞑想やストレッチ的な穏やかな動きが「保健衛生上の危険がある」とまでは言いにくいと思われます(私見)。これが医師法違反となると,世の中の禅僧とスポーツトレーナーが全員犯罪行為をしていることになってしまうので,ありえない解釈でしょう。

 ただし,タトゥーを入れる行為が医師法違反,有罪とされた裁判例があります(高裁で逆転無罪。大阪高裁平成30年11月14日)ので,医師法の限界は,いまだに不明確です。

 

3 違反の効果

三年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金,又はこれを併科されます(医師法31条)。つまり,刑事罰です。

 

 

4 実際上の注意点

  ヨガクラスを宣伝するにあたり病気が治ることを前面に押し出したり,実際にそれを治そうと何らかの行為をすることは,いずれも,やめておいた方がよいです。医師法17条はあくまで医療「行為」をしてはいけない,という規制ですが,効果効能を「宣伝」するだけでも,景品表示法,場合により薬機法違反にもなります。

 

 アーユルヴェーダなど代替医療に詳しい人が具体的な健康指導するといった場合,何をどう宣伝し,実際に何をやるかは,相当の注意を要します。

 

 

アドバンス法律知識

1 医師法の境界に関する厚労省のガイドライン

  厚労省が,一般人がどこまで医療行為関連業務をやってよいか,ガイドラインを発表しています。アーユルヴェーダ系の事業をする方は,必見でしょう。